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ふじのくに静岡通訳案内士の会

通訳案内士の仕事および観光情報を発信しています。 お問い合わせはshizuoka-guide@e-mail.jpまで

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12/5 ICIT学会御一行様 通訳案内 No.2 

静岡市グランシップで行われたIT学会参加のお客様を2つのコース(静岡市内コース、富士山周辺コース)に分かれてご案内しました。前回の鈴木担当によるコースレポートの第2弾です。今回は杉山・濱井が担当した富士山周辺コースについて報告します。

 このコースには外国からのお客様27名、日本の大学関係者3名の総勢30名が参加されました。IT関連の世界学会だけあって、参加者の出身国はアメリカ、イギリス、スイス、オランダ、イタリア、中国、韓国、インドと様々でした。英語という一つの言語を通じて、この多国籍集団に日本の文化、静岡県の良さを知っていただく絶好のチャンスと我ら2名張り切り、いろいろな準備をして当日を迎えました。

12月5日は、12:30に会場のグランシップ前を出発の予定が、15分遅れの出発となりました。当日キャンセルした方、また直前にコースを変更された方などがいらしたため、お名前や人数の確認に手間取ってしまったのが、原因です。通訳ガイドとしてこのような仕事も短時間でこなせなければ、観光案内はできないのだと不手際を反省しつつ、遅れのお詫びでツアーがスターとしました。午前中なんとかもっていたお天気が、東名高速に乗った頃から、無常にもぽつぽつと雨になりました。(杉山手作りのテルテル坊主の奮闘も空しく、彼女の努力が実ったのは、ツアー終了直前でした。)

 自己紹介に続いて、手作りの地図を広げて、日程説明(富士川楽座―白糸の滝―富士山本宮浅間大社―清水ドリームプラザにて駿河湾すし会席―静岡JR駅)を終える頃、バスから駿河湾が見えてきました。本来なら伊豆半島が見えるはずですが、何も見えず残念。(この本来ならここから○○○が…というせりふを何回使ったことか。誰の行いが悪かったのでしょうか。)駿河湾は水深2,500m、桜海老、高足蟹、シラスなどの宝庫などと説明し、「皆様の本日のお夕食が泳いでいます。」で本日の初笑いをゲット。せっかく静岡に来ていただいたのだから、静岡県を知っていただこうと、観光スポット、温泉、産業、特産品などを紹介しました。そうこうするうちに15分の遅れを取り戻し、最初の訪問先富士川楽座に到着。富士川楽座は東名きっての広大なサービスエリアです。ここからの富士山の姿は素晴らしいので、富士川を望む展望台で説明をする予定でしたが、雨のため急遽車内で行いました。

ここで、45分休憩。思い思いに自由時間を楽しんでいただきました。バスに戻られたスイスの方が 「日本のチーズを試食したが、なんであんなに柔らかいのか。」と聞かれ、返事に困る一幕も。また オランダの方から「変わった種類のコーヒーを見つけた。日本のコーヒーか。」と聞かれ、よく見てみると缶に、Fireの文字が。「普通のコーヒーです。ただの名前です。」というとがっかりしていました。また、「これは暖めて飲むのか。」と聞かれ、冷たいコーヒーを飲む習慣がないのだから確かにそう思うのも無理もないです。ましてや名前がFireなんですから。そういえば、以前「Pokari Sweatってなんかの動物の汗が入っているの。」と聞かれた事を思い出しました。また、チューハイが何だか分からずジュースだと思って買って飲んでしまった方も。

 その後、バスは一路白糸の滝に向かい、予定通り15:00に到着しました。このころから雨が本降りになったため、音止めの滝、白糸の滝の説明はバスの中で事前に行いました。雨の日を想定して拡大コピーした写真や絵を用意しておいたので、曽我兄弟のあだ討ちの場面などはけっこう臨場感たっぷりに説明できたのでは、と自分なりに思っています! あだ討ちなどという日本的な武士階級のしきたりがどの位理解していただけるのか、自信はありませんでしたが皆様、私の話術のせいか?真剣に聞いてくださいました。後で、スイスの方から「その物語はどこにドキュメントがあるのか。」と聞かれ、「鎌倉幕府が作成した文書に載っている、また当時の庶民はほとんどが文字が読めなかったので、この物語は版画になっている。」などと答えてから、想定外の質問に「はて?それでよいのか。ガイドの仕事はどんな質問にも、臨機応変に答えられなければ務まらないな。」と実感した次第です。

 次の目的地、富士山本宮浅間大社に到着したのは、暮れなずむ16:00でした。雨はやや小降りになっていましたが、神道の説明や仏教との違い、浅間大社の歴史、祭神については、バスの中で事前に説明。 まずは、鳥居をくぐるところで「今から境内に入るので、ここで礼を正して下さい。」と申し上げると一同シーンとなり、神妙な雰囲気のまま参道を歩き、楼門に到着。左右の随身の説明をすると、インドの方から「インドでは右側の人のほうが位が上だ。」と教えていただきました。国によって違うものですね。この大社の現在の建物は、関が原の戦いに勝利した家康の寄進によるもので、本殿の桧皮葺の屋根と「流れ造り」と呼ばれる浅間造りの建築様式に特徴があります。全国に1,300ある浅間神社の本宮だけあって、夕暮れにたたずむ建物の美しさは格別で皆様も厳かな雰囲気にすっかり魅了されていました。祈りの場であるだけでなくこのような優れた文化財を有することを日本人として心から誇りに思いました。

いよいよ拝殿でお参りすることになりました。皆様に5円玉を2つプレゼントさせていただきました。一つは賽銭箱へ、もう一つはご利益がありますようにと本国へお土産に持っていってもらいたいという願いからです。「お賽銭は最低5円ですが、10円払えば、ご利益が十分(=10)、つまり倍になるので実は多いほど良い」と説明すると大笑いが起きて、すこし緊張していたムードが和やかになりました。拝礼の仕方をお教えして、「どんな願いでもかまいません」と前置きして、「たとえばlove romanceとか」と言った所で、再び大笑いが起こりその後、皆様それぞれの願いを込めて、お参りを済まされました。神様、いろいろな言語を聞き分けて下さったでしょうか。
 

その後アメリカ人の方から、「なぜ日本人は、神道と仏教の両方を信じることができるのか。町はクリスマスの飾りがいたるところにあるがキリスト教は信じてないのか。」という質問があり、日本人の現代の宗教観について説明しましたが、確かにこの混合ぶりは外国の方からみると、不思議ですよね。

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(左端の赤い傘が濱井代表)

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 17:00に大社を出発し、夕暮れ迫る駿河路をバスはひたすら、すし会席が待つ清水エスパルスドリームプラザに向いました。そのバスの中でおりがみ講座を開き、全員で富士山を折りました。せめて富士山に会えなかったお詫びです。夕食は、皆様が楽しみにしていたすし会席に舌鼓を打っていただきました。1時間の夕食の後、バスは解散場所のJR静岡駅に向いました。ここで前夜折った和紙の折鶴を一人一つずつプレゼントしました。「鶴は、日本では永遠の命の象徴です。皆様の旅が実り多いものになりますように、この鶴とともに無事に本国に戻られますように祈っております。」と申し上げてお別れの挨拶としました。鶴の羽に片仮名でお名前や好きな言葉を日本語で書いて差し上げるととても喜ばれました。中には、彼女の好きなジャスミンを漢字で書いてほしいという方もいて、いまごろあの鶴は どこにいるのでしょう。

バスから降りるなり手を差し伸べて、Thank you very much.と言ってくださる方もいて、あいにくの天候でしたが、皆様それぞれにこの旅を楽しんでいただけたと私たちガイド2名もうれしく感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 この案内を通じて、つぎのようなことを学びました。
・ 地図、写真、折紙などを用意したことで、説明が単調になるのを防いだ。
・ 観光案内だけでなく、静岡県の紹介や富士山の成り立ち、日本人の習慣などについてもお話し、広く日本について、知っていただいた。
・ 外国の方とクイズをしたり、逆にこちらから質問をしたりして一方通行の説明にならないよう、心がけた。

しかし、なんと言っても一番感激したのは、皆様が一生懸命私たちの説明を聞いて下さり、この旅を楽しんでくださったことです。私たちもおもてなしの心を持って世界各国からのお客様と、精一杯触れ合うことができ、いろいろな見方や考え方を教えていただきました。このツアーで学んだことをこれからガイドの仕事に、生かして行きたいと思います。

文責は濱井でした。

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